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【薬学生向け】調剤薬局業界は経営危機、2018年診療報酬改定でどうなる?

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薬局業界未来

2018年診療報酬改定が迫っており不安な日々が続いているかと思います。調剤薬局に働く薬剤師として、今薬学生に知ってもらいたい内容をまとめてみました。

調剤薬局業界で起こったこと

私の時代は、まだ転職しても給与や待遇UPの交渉ができたんですが、今後は間違いなく厳しくなります。

私と同じ失敗を繰り返さないよう、是非とも薬学生[できれば就活前]に読んでもらいたい現場のリアルな話、今回は第2回です。

第2回では、ここ数年で起こった調剤薬局業界の変化と、今後働く上で薬局薬剤師がどのように変わるのかについて私の意見を紹介します。

前回は、調剤薬局の現状に加え、今後薬局数が減っていくこと、今は利益が取れているが今後経営が厳しくなることについて紹介しました。

ご覧いただくとおわかりかと思いますが、いい立地にミスの少ない薬剤師を配置するだけで、誰がやっても儲かるのが調剤薬局業界でした。

そのため、調剤薬局は不動産業という経営者も少なくありません。

その結果、薬剤師の評価と薬局業界は次のようなことが起こりました。

薬剤師個人の評価

薬剤師対人業務

  1. 正確で速い調剤が評価される
  2. 正確で速い監査が評価される
  3. 正確で速い投薬、薬歴記入が評価される

調剤薬局では、正確なことはもちろん、いかに速くお薬を患者さんに渡すか、いかに多くの患者さんをさばくかという“対物業務”が評価されるようになりました。

しかし、患者さん一人当たりにかける時間が少なくなるので、報酬に見合った業務=”対人業務”が疎かになっていることが指摘されています。

調剤薬局数の伸び

年別調剤薬局数

  1. 儲かるので新規出店を増やす
  2. 薬剤師が必要なので、給料を上げてでも薬剤師を採用する
  3. 調剤薬局業界の薬剤師給与が上がる

調剤薬局の新規出店が増え、2017年現在では6万軒近くまで薬局数が伸びています。

その結果、調剤薬局薬剤師の需要が高まり、高い給料を払わないと薬剤師を確保できなくなったのです。

そして今では、病院薬剤師と調剤薬局薬剤師との給与格差が問題となっています。

中央社会保険医療協議会[中医協]の資料では、薬剤師の平均給与は次のようになっています。

2015年度 2016年度 給与の伸び率
国立病院 5,946,603 5,893,209 -0.9%
公立病院 6,106,492 6,070,824 -0.6%
医療法人病院 5,089,191 5,095,498 +0.1%
薬局管理薬剤師 7,566,008 7,666,796 +1.3%
薬局勤務薬剤師 5,029,295 5,015,751 -0.3%

物価を2%上げることを目標としてるので、病院も薬局も実質はマイナスという解釈でしょうか。

確かに、これを見ると調剤薬局薬剤師の方が給与が高いですね。

病院薬剤師は全体の給与が物価を抜きにしても下がっているので、病院薬剤師が辞めてしまうというのはわからなくもありません。

ただし、ここに書いてあることは、数年前までに起こった出来事や調剤薬局の考え方です。

調剤薬局業界は今大きく変わってきている真っ只中です。

特に中小規模の調剤薬局では、次の資料に示す通り経営が厳しくなっています。

2018年度診療報酬改定でますます経営の存続が危ぶまれるでしょう。

2016年度の調剤医療費

2016年4月より診療報酬が大きく改定されました。

まずまず厳しい改定だったかなと思っていましたが、意外にも調剤薬局の技術料[利益の部分]は増加していました。

しかし、従業員給与や派遣にかかる経費、設備投資費が増加したため、経費を差し引いた実際の利益は、全ての規模の調剤薬局において減少傾向でした。

2016年度調剤医療費の伸び

2015年度 2016年度
調剤医療費 78192 74395[-4.9%]
技術料 18283 18490[+1.1%]
薬剤料 59783 55778[-6.7%]

単位:億円

2016年度処方箋1枚当たりの調剤医療費の伸び

2015年度 2016年度
調剤医療費 9546 9015[-5.6%]
技術料 2232 2240[+0.4%]
薬剤料 7299 6759[-7.4%]

単位:億円

2016年度の診療報酬改定では、薬剤料が例年以上に削減されたので、トータルの調剤医療費もマイナス4.9%と伸びが抑えられました。

一方で、調剤技術料の部分がわずかではありますが、増加しています。

この調剤技術料の伸びは、お薬手帳を持たない患者の負担金が増えたことと、かかりつけ薬剤師制度が新設されたことによります。

このように調剤技術料は増加したのですが、調剤薬局の利益(収益-経費)は次に示すように減益となりました。

2016年度調剤薬局の薬局規模別利益[1店舗あたり]

2015年度 2016年度 収益に対する利益の割合
1店舗 7249 5710[-21.3%] 3.8%
2-5店舗 6858 6235[-9.1%] 4.0%
6-19店舗 13787 12976[-5.9%] 8.3%
20店舗以上 28573 26661[-6.7%] 12.1%

単位:千円

1店舗あたりの利益はどの規模の法人も減少しました。

特に1店舗のみの法人については利益が前年比21.3%減、また売り上げのたった3.8%しか利益にならないと報告されています。

20店舗以上展開しているチェーン薬局と比べると、同じように働いても1/3しか儲からないという現状、経営状況の先行きがとても不安ということが見て取れることでしょう。

調剤薬局の利益が半減するとどうなる?

前回、処方箋1枚につき2000-3000円ほどの利益があるとお伝えしました。

この利益率が続けば、まず経営困難になることはありません。

しかし、2018年診療報酬改定以降、この利益が大きく下がることは間違いありません。

毎年高齢者が増え医療費が1年間に約1兆円以上増えていく一方で、この40兆円を超える医療費を払う財源が国にはありません。

消費税を5→10%に上げても医療・介護に回される金額はたったの1.5兆円だけ、あと2%増税しただけで解決できる額ではないんですよね。

団塊の世代が75歳以上となる2025年には、53兆円の医療費がかかると予測されています。

介護が必要になってくると言われる75歳以上の後期高齢者は2030年にピークを迎えます。

75歳以上人口2030年

[厚生労働省保険局:平成30年度診療報酬改定の基本方針(骨子案)に関する参考資料]

医療費を払えなければ、医療費を削るしかないんです。

そこでターゲットにされているのが、調剤薬局の処方箋1枚2000-3000円の利益なんですね。

実は、病院内処方で薬をもらうよりも調剤薬局で薬をもらう方が1000円ほど高くなるんです。

自己負担で言えば1000円の1-3割なので100-300円程度ですね。

院内処方院外処方格差

この金額の統計をとると、病院内処方で薬を貰う場合よりも調剤薬局で薬を貰う場合の方が、3倍近く高くなるそうです。

まぁ、この言い分がすべて正しい訳ではないですが、処方箋1枚当たりの利益が最大半分くらいまで下がる可能性があると私は考えています。

調剤薬局の利益が半減すると赤字になる

仮に、処方箋1枚の利益が1000-1500円に半減してしまうとしましょう。

1日40人の患者さんが来れば4万円-6万円/日の利益となります。

1ヶ月で20日間のみの営業の場合、80万円-120万円/月の利益となります。

薬局運営には、人件費だけでなく、家賃、光熱費、分包紙や印刷コストなど意外と経費がかかります。

ちなみに薬剤師や事務員を雇うには、給料だけでなく厚生年金や健康保険などの社会保険料、交通費なども雇い主が払わなければなりません。

処方箋1枚利益

薬剤師1-2人の人件費に事務員1-2人の人件費、家賃やその他経費を含めると、黒字化はまず難しいと考えられます。

処方箋利益が半分というのは極端かもしれませんが、このように薬局の利益が下がり続けると、銀行への返済が滞ったり、融資も下りにくくなります。

これまでの薬局業界は、店舗数を拡大することによって、1店舗あたりの利益を上げるように努めてきました。

銀行からの融資が下りなければ、新規薬局の開局やM&A、新しい事業を始めることができず、中小規模の調剤薬局は経営が厳しくなるのです。

調剤薬局業界の給与が下がる

薬剤師給与下がる

薬学生のみなさんが就職を考えるとき、経営状態が不安定な調剤薬局には入りたくないですよね?

薬学生は、初任給を下げても安定を求めて大手調剤薬局に就職するようになります。

大手調剤薬局はあえて給与を上げなくても人が集まるようになり、その結果、薬局業界全体の給与が下がるのです。

大手調剤薬局に人が集まるようになれば、次は優秀な人材しか採用しなくなるかもしれません。

つまり、これまで売り手市場と言われていた薬局業界が変わる日も近づいています。

6年間大学でみっちり勉強をして、国家試験も受かったのに、給料はこれだけ?と思う薬剤師がますます増えるのではないでしょうか?

調剤薬局の仕事内容の変化

一方で、薬局薬剤師の仕事内容も大きく変わります。

良い言い方をすると仕事の幅が増え、薬剤師として活躍する場が増えるでしょう。

一人一人の患者と向き合う時間が増え、かかりつけ薬剤師として外来から在宅医療までサポートし、今まで以上にやりがいを感じられるようになると思います。

悪い言い方をすれば、薬局を出ても患者の対応に追われることが多くなり、常に仕事のことを気に掛ける必要がでてきます。

そんな大変なの嫌だ!と思うかもしれませんが、在宅医療に携わっていると、医師や看護師は常に仕事のことを気に掛けています。

薬剤師だけ特別扱いされるなんてことはありませんよね。

また、これまでの単純作業ではなく、医師・看護師・ケアマネさんなど多職種の方と関わることが多くなり、今まで以上のコミュニケーション能力が求められ、仕事量の増加に加え、精神的・心理的負担が強いられることになります。

負の仕事サイクル

最悪のケースかもしれませんが、調剤薬局業界の利益が下がると、やりがいはある一方で、介護業界と同じ負のサイクルに陥る危険性があると考えています。

次回は、実は病院や製薬企業の未来も危ういという実態、そして薬学生へのメッセージをお伝えする予定です。

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